2017年 02月 19日
短編 -現代病?-
私は皮膚科医
数年前に駅の近くにクリニックを開業した
いくつかの店が並ぶ通りにある
隣は携帯電話ショップだ(ここが来院をすすめているらしい)
最初この店との関連性に気づかなかったが
ある時期から同じ症状を訴える患者が増えてきた
“スマホが指紋を読み取ってくれない”
というものだ
スマートフォンにかぎらない
車や建物に入る際の指紋認証など(会社に入れず遅刻した例も)
病の定義が
【本人が心身に不都合を感じ社会生活に制約が生じその改善を望む状態】
とするなら
現代人の生活に欠かせないスマートフォンがすぐ開けない状態は
そうなのかもしれない
指紋が薄くなるという症状は一般的に起こりうることではある
治療法も確立されている
かつてこんなことで悩まされるのは新聞をめくるくらいだったが
現在当院の主な患者になりつつある
そのうち皮膚科に指紋外来ができる日も遠くない未来だろう
by su-udon-otoko
| 2017-02-19 12:46
| 短篇小説